12 月11
毎日新聞 2009年12月11日 東京夕刊に掲載されました。
キャンパる:圧巻、ガクセイイシン 学生たちが企画、武道館を埋めた
日本武道館で11月23日に「Age Stock’09」が開かれた。大学生たちが企画、参加する、学生史上初の武道館イベントだ。これを企画・制作した学生団体AGE(エイジ)創設者で代表の光井勇人さん(26)=慶応大学総合政策学部4年=に話を聞き、彼らの活動を追った。【法政大・畔田涼】
◇AGE創設、1340日の歩み
「武道館までの道のりは本当に険しかった」。光井さんは苦笑いを浮かべながら、AGE創設からこれまで1340日間の活動を振り返る。
「大学生が日本を元気にしたい」という思いから06年3月にAGEを創設。初期メンバーは10人もいなかった。この時から大学生の可能性を発信する夢の舞台として「日本武道館」を目指した。
子どものころは夢を持つことができた。成長するにつれて知ってしまう理想と現実のギャップ。しかし、光井さんは「大人になることは夢と現実の折り合いをつけることでは決してない」と語る。
武道館は伝統あるイベントの聖地。実績も知名度もない団体には貸してもらえない。「多くの人に無理だと言われたことが、逆に糧となった。どれだけリスクを負ったとしても、絶対に夢をかなえてやろう」と決意した。
AGEは、横浜赤レンガ倉庫を借りきった「横浜学生の祭典2007」など数多くのイベントを実施し、実績と信頼を築いていった。「常にゼロから前例を作り出していくことに苦労した。1を100にするよりも0を1にすることの方が大変だ」と話す。
そして昨年の12月に、吉報が届いた。「たくさんの方の助けもあり、学生団体として初めて武道館でイベントを開催できることになった」。この奇跡は彼らが自ら導いた。
それから11カ月。実行委員会を結成し、総力をあげて準備してきた。「最も苦労したのは資金集め」。不況下で、前例のない学生イベントを支援してくれる企業は、なかなか見つからない。
大変なことの方が圧倒的に多かった。それでも彼らがあきらめなかったのは「AGEの仲間がいるから。自分たちと同じ学生に、輝ける場所を提供したいという共通の思いがあったから」だ。
多くの苦難を乗り越えて実現した今回のイベント。「お客さんに何かを感じとってもらえるかが成功のカギ」。光井さんに見どころを聞いたところ「すべての瞬間を見てほしい」と即答した。
◇夢、信じる力
<イベント当日>
16時開演。3000円の前売り券8000枚は完売。当日は立ち見もあわせて約1万人が詰めかけた。客層は圧倒的に若者が多い。
コンセプトに掲げたのは「ガクセイイシン」。学生が持つ「威信」を「以心伝心」させることにより、同世代と次世代の学生の心に「維新」を呼び起こすことを目指す。
総合MCは、劇団ひとり。夢をかなえた先駆者として歌手のAIやCHEMISTRYたちがライブアクトを行った。
学生たちのパフォーマンスも圧巻だ。オープニングを飾ったのは、このイベント限定の男女混合コラボ・チアリーディング。約100人が華やかに演技を披露した。
スクリーンに「威信」の文字が映し出され、始まったのは、一般公募で集められた学生ダンサーによるオリジナル演目。バックグラウンドの異なる彼らが、プロダンサーによる振り付けで一つのステージを作りだす。
さらに、音楽コンテストも行われ、応募してきたアーティストの中から選出された3組が演奏。彼らの夢を音楽という形でぶつけた。「音楽を志す学生にとって、可能性の象徴となる舞台を作りたかった」とAGEイベント局の江口亮介さん(慶応大経済学部2年)は語る。
優勝したザ・ラヂオカセッツは「学生ミュージシャンが目指す甲子園のような場所ができたことで成長することができた。この舞台を用意してくれた同世代のAGEスタッフの愛を感じた」と話す。
フィナーレで、光井さんが4年越しの夢への思いを叫ぶ。イベントを通して一貫して伝えられたことは「夢を信じる力」。今この時代に、学生であるということに誇りをもたせてくれた5時間半だった。
<幕が閉じて>
「自分たちと同じ学生なのにすごい」「学園祭プラスアルファの要素が入っていて、あきさせなかった」と観客は満足した様子で話す。
イベント終了直後、光井さんは「夢の向こう側は最高でした」と武道館を後にするお客さんをながめながら話した。このイベントを最後に光井さんは代表を引退する。「次の世代に夢を託したい。この団体が今後何をするかは、彼らが次にどんな夢を選ぶか次第だ」
AGEが歩みを止めることはない。今回作り出した学生の可能性をエネルギーに変え、彼らは走り続ける。




